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『ウィンター家の少女』

ミステリ

 

 

 

ウィンター家の少女 (創元推理文庫)

ウィンター家の少女 (創元推理文庫)

 

 『ウィンター家の少女』(キャロル・オコンネル)

 

 過去に九人もの人が殺されたウィンター邸で、再び殺人事件が起こった。殺されたのは殺人の罪で保釈中の男。当時その屋敷にいたのは老婦人ネッダと姪のビッティ。だが、ネッダはウィンター邸で58年前に行方不明になった少女だったと判明したことから、事件は思わぬ方向へ――。人気のマロリーシリーズ。

 

 今回はミステリよりも人間ドラマが重視されていたので、最初は取っ付きにくいかもしれない。とりあえず、ライカーはかっこいい。ライカーがかっこいいよ!

 

 

 以下はネタバレ感想。

 

 ジャズに始まり、ジャズに終わる一作だった。

 

 読み終わってみるとミステリとしても人間ドラマとしてもおもしろかったと思うのだが、今回は読み終わるのにかなり時間がかかってしまった。キャロル・オコンネルは、毎回、ほぼ一気読みするというのに、なぜか、世界に入りこめない。「マロリーだ!」、「チャールズ・バトラーだ!」、「ライカーだ!」、「コフィ―だ!」と知っている人物が出てくるたびにテンションは上がるのだが、やっぱりそこでページが止まってしまう。どうにも話に乗り切れないのだ。

 それでも、どうにか少しずつ読み進めていって、半分以上進んでから一気におもしろくなったが、それまではどんな話なのかわからない、何が起こっているのかさっぱりわからないという状態だった。ストーリーとしては「過去に大量殺人が起こった屋敷で、保釈中の殺人犯が殺された。さて、犯人は誰だ」という単純なもののはずなのに、ゆっくりといろんな人物を交えて話が進むから何が何だかわからない。

 読了して思うのは、この「世界に入りこめない。何が起こっているのかわからない」という状態は読者の私だけではなく、登場人物全員が感じていたことなのではないだろうか。過去に何があったのか、それはどんな悲惨な事件だったのか、それが今回の殺人事件とどんな関係があるのかを登場人物と共に、読者が手探りでゆっくりと探っていくような書き方がなされていたからではないか。だからこそ、キャラたちがその輪郭をつかむまでは小説の世界に没頭することができなかった。

 

 冷酷で完璧な刑事マロリーはいつも通り、「冷酷」、「人間味がない」と描写されているのだが、今回はむしろ子どもっぽいな、と思わされた。警察の近くのカフェでマロリーの亡くなった義父が座っていた椅子に観光客が座っていたからって、無理やり席を変わらせるとか、いくら何でもひどいな、と思う。でも、それがマロリーなんだけれどね。そのフォローを入れるのがライカーなのだが、相変わらずかっこよかった。

 

 いままではマロリーがどれだけ冷酷な行動を取ろうとも、何があろうと全面的に肯定していたのがチャールズ・バトラーだったのに、気品あふれる心優しい老婦人ネッダに好意を寄せたことで、彼は初めてマロリーを拒絶してしまう。あのチャールズに拒絶されてしまったことで、マロリーもまたショックを受ける。ただの仲たがいで終わってもよかったのに、結局、二人のすれ違いのせいでネッダは死に追いやられてしまい、チャールズに消えない痛みを残す。ただただ善良だったチャールズが皮肉な笑みを浮かべるようになってしまったのが何とも切ない。

 相変わらずライカーは、最高にかっこよかった。前作でさんざんな目に遭ったライカーがいつも通りになってくれて安心したが、それでも、やっぱり人知れず消えない傷が残っているんだろうな。いつもひどい扱いを受けているコフィ―も決めるところは決めてくれるので好きだったりする。

 

 あまりにも悲惨な目にあっていたネッダが最後、それでも救いを見出すところも切なかった。客観的に見て、それが救いではなくても、本人がそれを信じているのなら、それも救いになるのかもしれない。

 ミステリとしても意外な人物が犯人でおもしろかった。(ただ、犯人は許さん)マロリーも少しずつ感情が出てきたようなので、これからどうなっていくのか楽しみである。

 というか、作家買いしているのはキャロル・オコンネルとミネット・ウォルターズだけなのだから、頼むから早く続きが出ますように!