『パパ、ママ、あたし』

 

パパ、ママ、あたし (創元推理文庫)

パパ、ママ、あたし (創元推理文庫)

 

 

 

 

『パパ、ママ、あたし』 カーリン・イェルハルドセン

 ペトラ刑事は公園でベビーカーに乗った赤ん坊と女性の死体を発見した。同時期に フェリーの船内で少女が殺される。無関係に思えた事件は意外なつながりを見せる。閉じられた家、崩壊した家庭、家に取り残された幼い少女、捜査を開始した 刑事たちは何を見るのだろうか――というお話。

 ショーベリ警視シリーズ二作目。「2」とついていないものの連作ものなので、一作目の 『お菓子の家』を読んでからこちらを読んだ方がいいと思います。シリーズだとそれだけで読んでもおもしろいものは結構あるし、たまに三作目、二作目と訳さ れて一作目が出ることもありますが、このシリーズは絶対に順番に読む方がおもしろいです。

 最初から陰湿で残酷な描写が続くのに心が折れ てページをめくる手が止まっていましたが(子どもの虐待がきついのなんの)、物語が進み始めれば一気読みでした。ハンナちゃん(3歳)が一人取り残された 姿にハラハラし通しで、メインの事件よりそちらが気になって仕方なかったです。最初から最後まで犯人は外道でした。


 続きからネタバレありの感想。

 

 

 とにかく家に閉じ込められたハンナちゃんが心配で心配で読み進めた。鍵がかかった家で一人きり。母親は行方不明。父親は出張中。鍵のかかった危険だらけの 家の中で食べ物を探して、お風呂に入って、帰らない母親を待ち続ける。ハンナが電話を手当たり次第にかけた先のバルブロという女性の機転、最後まで助け出 そうという気概がすばらしかった。72歳という年齢ながら、子どもの証言を頼りにひたすら歩いて家を探して見つけ出し、警察に通報して、その結果を見届け るためにさらに家まで行く根性がすばらしい。もしももう少し発見が遅れたら、どうなっていたかと思うと恐ろしくてならない。

 殺された少 女イェニファーとその妹エリーセもまた、劣悪な環境に育ち、危険なことを危険と認識しないまま行動したために、こんな結果になったのだろうなあ、と思う。 なんかもうそっちに行ってはだめだよー、と言いたくなる方にどんどん行ってしまうのが危なっかしくて仕方なかった。

 ペトラ刑事の事件も 解決していないし、三作目であの事件の首謀者がわかるんだろうけれど、信用していた人が犯人だった説は頼むからやめてほしい。あの人だけは犯人であってほ しくない。いきなりセクハラしてくる署長はマロリー(キャロル・オコンネルの超強い刑事)にボコボコにされればいいのに。幸せになってほしいなあ。

 ショーベリは前作では好きだったんだけど、あれだけ良い奥さんがいて、かわいい子どもたちがいるのに、突然良く知らない年上の女性にのめりこんでしまったので、やや引いてしまった。

 すべてが解決するだろう三作目は訳者さんが「お楽しみ」と言いがたいほどの悲しい事件らしいので、覚悟を決めて読みたいと思う。